大森篤志からの回答内容
食べるものに困っていた時代は、多くの人たちが「お腹いっぱいになるまで食べられたらどんなに幸せだろう」と思っていたはずです。
クゥさんのご相談内容を読ませて頂き、かつて私の父親が「中学1年の誕生日プレゼントが“たまご二個”だった、当時の家計では贅沢とされた卵かけご飯を誕生日だけは目一杯食べることが出来て幸せだった」と話してくれたことを思い出しました。
一方、食べるものに困らなくなった時代に生きている私たちは、それだけでは満たされずに「もっと、もっと・・・」と別の何かを欲しがるようになっているのが実態ですよね。
おそらくそれは、物質的な豊かさがもたらす代償なのかもしれません。
下手に何でも手に入れることが出来てしまうと、かえって心のバランスを崩してしまう。例えば、「自分の心の中の環境」を「自分の部屋」に置き換えて想像するとわかりやすいかもしれません。
オリエンタルなラグを見て「これ素敵ね」と欲しがり、ファンシーなテーブルを見て「すごくかわいい」と惹かれ、北欧デザインの棚を見て「これもいいわ」と迷い…結局全部を購入する。(笑)
こんなふうに、「いいな」と思ったものを何でも手に入れていたら、統一感のない部屋になってしまいます。そんなチグハグな空間で心を落ち着かせてゆったり寛ぐことなど出来るでしょうか。
「いいな」と思っても値段を気にせず買えないからこそ『本当に必要なもの、心から好きなもの』を吟味して選ぶようになるし、自分が求めているものに統一感があることに気づくことも出来る。そうやって手に入れた自分の個性が反映されたものに囲まれた部屋であれば、心が落ち着き、元気になれるものです。
何より、何でも手に入れられない不自由さが、小さく少しのもので大きな幸せを得られる感性を育み、真の豊かさ『心の幸せ』を作るのだと私は思います。
今のクゥさんの心は、まるで“統一感のない部屋”のような状態になっていませんか?
「もっとお金が欲しい、もっと違った生き方をしたい、もっと、もっと・・・」と求めてばかりいては、クゥさんが心から安らげる居場所は作れません。あれこれ手に入れても、不自由な感覚が消えることはないのです。
「現状を変えなきゃ!」と思ったら、強欲にならずに、まずは『不自由な状態を楽しむ』ことです。
お金に余裕のないことを嘆き、不自由な状態を悲しまず、あらためてクゥさんが求める生き方について考えてみましょう。
「食べるものに困っていない、気ままに暮らしている、安定した仕事に就いている」など、今のクゥさんに既にあるものに目を向けて下さい。
ほら、なんだか余裕があるように思えてくるではありませんか。
転職を考えることも、新しいパートナーとの出会いを求めることも、今ではありません。クゥさんが現状を変えることを考えたら、その前に『今の自分の状態で満たされるようになる』ことが肝心だからです。
まずは、今の自分を受け入れましょう。現状に嘆くことを止めれば、「自分に保険をかけるつもりで何か資格を取ろうかな」「気持ちに余裕を持って婚活でもしてみようかな」など、自分の可能性にエネルギーを注げるようになるはずですよ。