大森篤志からの回答内容
「行き場がない…」ご相談の内容を読みながら、私はKさんの心情を慮っております。
とは言っても、行き場がない状態をそのままにしておくことは賢明ではありませんよね。
大切なのは、やはり『これからどうするか』です。行き場がなければ『作る(あるいは、別の道を探す)』しかありません。
そこで、要になってくるのが“お母さん”です。
単刀直入にご質問させて頂きます
お母さんは離婚を考えているのでしょうか。
(※本気で離婚を考えているという場合は、お母さん自らが一度弁護士に相談してみる必要があります)
おそらく、Kさんとお母さんは“そういう会話をするまでに至っていない”のではないでしょうか。
まずKさんは、お母さんの真意を掴むことから始めたほうが賢明です。
但し、強引に真意を引き出そうとしてはいけません。
「お母さん、このままお父さんと一緒にいて本当にいいの?」と聞いても、「私は限界に近いよ」と打ち明けても、それでも何も話してくれないかもしれません。
そういう時は「今すぐ無理に話す必要はないけれど、話したくなったらいつでも聞くよ」と伝え、お母さん自らの意志で話してくれる時が来るまで焦らず待ちましょう。
お母さんは“今自分がお父さんから受けている行為がモラハラであることに気づいていない”かもしれません。
たとえ気づいていたとしても、これまで築き上げてきた生活基盤を捨てるという不安、離婚後に直面するであろう経済的自立の困難さ、親権問題、あるいは周囲の理解を得られないことに対する絶望感などから、お父さんと離婚できない理由をあれこれ見つけ出して迷走し続けている可能性もあります。
また、子供(KさんやKさんの弟)のことや、自ら家庭を崩壊させてしまうことへの自責の念から「自分が盾となって受け止めて我慢し続ければいいんだ」などと考え、その場を離れようとしないことも十分に考えられることです。
Kさんは、お母さんの迷いにあれこれ意見するのではなく、まずは理解しようと努力してみて下さい。二人で話す(主に聴く)機会を意図的に増やし、少しずつ歩み寄っていくのがコツです。
Kさんがお母さんを理解しようとする過程では、お母さんの感情が大きく乱れ、ひどく攻撃的になったり、拒絶を示すこともあるでしょう。しかしそれは、お母さんが自分を取り戻す過程の中で見せる正常な言動です。そのことを頭の片隅に置きながら、根気強くお母さんと向き合いましょう。
お母さんご自身がお父さんと離婚することを決心した場合は、弁護士や頼れる親族と共にお母さんをサポートしてあげて下さい。
お母さんご自身が「離婚したいけれど決心できない。でもどうにかしなければいけないこともわかっている」という場合は、一時的にお父さんから離れることも検討していきましょう。
例えば、母方の実家を頼る
一時的にお父さんから離れる具体的な方法としては、「母方の祖母の前では異常なくらい外面が良い」とのことでしたので、まずは母方の実家を頼るのも一つの方法でしょう。
但し、母方の実家を頼るにしても条件があります。次のような点を確認してみて下さい。
- 住み込める物理的なスペースはあるか。
- 母方の実家に住む全ての人が、Kさんたちの置かれた状況や心理状態を理解した上で受け入れてくれるか。
- 生活を立て直すまでの一時的な経済援助が受けられるか。
- 父親の異常な言動を理解し、執拗な接触や嫌がらせから守ってくれるか。
お父さんのようなモラハラ加害者は、離れていった家族に接近する場合も、『自分にとって不利になりそうな行動(接近方法)は選ばない』可能性があります。
そのため、父親がもしKさんたちを連れ戻そうとする場合、「母方の実家の人にバレないよう実家の外でこっそり接近してくる」か「電話」や「メール・LINE」、あるいは「手紙」や「誰かを介す」などの手段をとってくるのが関の山であるとも考えられます。(※あくまでもご相談内容からの想定、推測の域を出ない事もご理解下さい)
想定される父親の接近方法がこの程度である場合は、母方の実家を頼るリスクよりもメリットのほうが勝ると言えそうですよ。その間、安全の確保と精神面の支えを得ながら、自立のための準備を着々と進めていけばいいのです。
母方の実家や親類の援助が得られない場合は、行政の相談窓口をフル活用したり、民間のシェルターなどを検討することも考えてみて下さい。(※相談窓口等の情報は最後にお伝え致します)
一つ気になる点が、、、
「メンタルクリニックの先生」とありましたが、どなたがお世話になっているのでしょうか。
なぜ対象者をお聞きしたのかと言いますと、もし対象がKさんの父親である場合は、Kさん家族にとってマイナスに作用することもあるからです。
例えば、カウンセラーが父親にカウンセリングを行っている場面を想像してみて下さい。
そもそもカウンセリングというものは、カウンセラーがクライエントに対して“無条件の受容と共感的理解に努めながら援助していく”という基盤の上に成り立つ技法です。
わかりやすく言えば、父親が「妻や子供がダメダメすぎて正直私も限界なんです。これでも私は感情を抑えているつもりなのですが、それでもつい言葉がキツくなってしまう時はどうしてもあります」と自分本位の主張をしたとしても、まず「そうでしたか」と肯定的に受け止めるのがカウンセリング。
これは、父親に「やっぱり俺の言い分は正しかった。先生だって俺の正当性を認めてるじゃないか」と誤った認識をさせてしまうことにつながり、父親ご自身が『自分を正当化して家族を責め立てる格好の口実にしかねない』のです。
モラハラ加害者向けのカウンセリング、あるいはモラハラ加害者に対する更生プログラムなどに、“もしかしたら変わってくれるかもしれない”という可能性を見出そうとする被害者家族の気持ちは痛いほどよくわかります。
しかしカウンセリングは、クライエントが自分自身に問題がある可能性を理解する(受け入れる)ことが出来て、もしそうとわかればその問題を解決したいという意思がクライエント自身にあることが必要条件(前提)です。
つまり、モラハラを自覚できない父親にカウンセリングを試みても効果は期待できない可能性があるということ。
もし対象が父親である場合は、そのせいで問題解決が困難になったり無駄に長引いてしまうケースもありますので、クリニックの先生と相談しながら中断や終了することも検討してみて下さい。
行政の相談窓口
行政や民間の支援機関を把握しておくと安心材料になると思います。
下記は、政府の相談先ページへのリンクです。
「最寄りの行政相談窓口」や電話番号が掲載されていますので必ず確認をしておいて下さい。
参考 一人で悩まずお近くの相談窓口に相談を。政府広報オンライン 参考 配偶者からのDV被害相談DV相談ナビ